【イベントレポート】令和6年度 第1回コミュニティイベント「交流型キックオフ」

公開日
2024/09/27

2024年9月26日、鹿児島県のスタートアップ支援プログラム「CHEST」のキックオフイベントが、鹿児島市のコワーキングスペースSOUUにて開催されました。本プログラムは、鹿児島県内の起業家やスタートアップ企業を支援し、地域全体のエコシステムを強化することを目的としています。

主催者からメッセージと概要説明

鹿児島県からのメッセージ

イベントの冒頭で、鹿児島県商工労働水産部産業立地課新産業創造室スタートアップ支援係の濵田圭史より、プログラムの意義について挨拶がありました。濵田氏は「スタートアップや支援者同士が交流通じて、オープンイノベーションにつながる場を創出し、ビジネスのアイデアや気づきを得て欲しい」と期待を述べました。

運営事業者紹介とプログラム概要

イベントの運営を担当しているのは、デロイトトーマツグループの有限責任監査法人トーマツです。地域未来創造室の田中拓志氏によると、同社は全国30都市でスタートアップ支援を行い、鹿児島では3年前から取り組んでいます。今回の「CHEST」プログラムでは、地域からロールモデルとなる起業家を輩出し、持続可能なスタートアップエコシステムの構築を目指しています。「CHEST」プログラムは、大きく2つの軸で構成されています。

  1. かごしまスタートアップ実証支援プログラム
    仮説の検証や進捗管理、モチベーション維持を支援するプログラムで、スタートアップ企業が成長するために必要な実証機会や調整、壁打ちの機会が提供されます。
  2. かごしまアクセラレータープログラム
    具体的なプロダクトを持っている企業に対して、資金調達やメンタリング、IPOやM&Aのサポートを行うプログラムです。事業の壁に直面した際、専門家によるサポートが受けられるのが特徴です。

月1回のコミュニティイベント

さらに、これらのプログラムを補完する形で、毎月1回の「コミュニティイベント」も開催されています。このイベントは、プログラム参加者同士や外部の起業家との交流の場を提供し、鹿児島のスタートアップ界隈全体の活性化を図ることを目的としています。

地元企業が描く未来へのビジョン:ライトニングトークで見えた地方の可能性

イベントでは、鹿児島の企業家や起業家たちが集まり、それぞれのビジョンやプロジェクトについて語るライトニングトークが行われました。様々な業界から集まった参加者たちは、自分たちの取り組みを3分という短い時間でプレゼンし、地方の可能性を切り開く新たな視点を共有しました。その内容を詳しく紹介します。

株式会社fab星原氏:飲食業界のDX化を目指して

星原氏は、未経験から飲食業界に飛び込み、その中で利益率の低さに課題感を抱いたことをきっかけに、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に取り組んでいます。配膳ロボットやタブレットでの自動注文、セルフレジを導入し、人件費を半減させるという成果を上げました。自社製品であるAIによる自動接客も提供するなど、飲食業界におけるデジタル技術の活用を推進しています。さらに、星原氏は鹿児島県日置市にテーマパークを作りたいという夢を抱いており、そのために町全体をブランディングする提案も行っています。「地方こそDX化が必要」と語る星原氏の取り組みは、地域経済を活性化させるための新たな一歩と言えるでしょう。

株式会社TS.GROUP吉松氏:自衛隊のノウハウを職人育成に

吉松氏は元自衛官で、その経験を活かし、職人育成に取り組んでいます。自衛隊で培った教育ノウハウを活用し、未経験者をわずか1年で熟練者の75%のスキルまで引き上げる育成プログラムを提供しています。また、特許出願済みの技術を使ってベテラン職人のスキルを可視化し、マニュアル化が困難だった職人技を次世代に伝える取り組みも行っています。「育成プログラムがあることで採用強化にもつながる」とし、今後もこの事業を成長させたいと語る吉松氏は、2年連続でアクセラレータープログラムに参加し、地域産業の発展に寄与する姿勢を見せています。

向井氏:VRを活用した「空間ビデオ」で新しい旅行体験を提供

WEBライターである向井氏は、ビジネスプランコンテストに参加し、VR技術を活用した「空間ビデオ」という新しいサービスを提案しています。これは、家にいながら世界中を旅できるコンテンツで、映像に加え、食品やフレグランスを含むパッケージを提供し、よりリアルな旅行体験を提供するというものです。向井氏自身が膝の痛みで長時間の移動が困難な経験を持ち、同じように旅行を楽しむことが難しい人々に向けて、このサービスで新しい旅行の形を提供したいと考えています。

日本政策金融公庫柿川氏:スタートアップを支える資本性ローンの紹介

柿川氏は、スタートアップ企業に対する融資支援を行う日本政策金融公庫の担当者として、地方のスタートアップ支援に力を入れています。具体例として「資本性ローン」という仕組みを紹介しました。このローンは、スタートアップ企業が事業を軌道に乗せるまでの時間を確保し、成長を後押しするものです。スタートアップの資金面での課題に寄り添い、事業成功へのステップを支援しています。

株式会社ソーシャルアップス垣内氏:次世代デジタル人材育成プロジェクト

垣内氏は、若者の力を活用し、鹿児島の課題を解決するためのプロジェクトを主導しています。垣内氏の取り組みで特に注目されるのが、鹿児島市次世代デジタル活用人材育成プロジェクト「SaKURA」です。これは、地方課題の解決とIT技術を組み合わせたプロジェクトで、特に女性が多く参加している点が特徴的です。また、ノーコードツールを活用することで、技術的なハードルを下げ、誰でも気軽に参加できる環境を提供しています。垣内氏は、これからのデジタル時代を担う人材育成に向けて、積極的に活動を続けています。

株式会社クエイル池田氏:バーチャルコールセンターの未来

池田氏は、鹿児島市でアプリ開発会社を10年以上運営しており、現在はバーチャルコールセンターの実現に向けた取り組みを行っています。AIと自動音声認識技術を活用し、顧客対応を効率化するシステムを開発していますが、現時点では実証実験が不足しているため、今後の課題として捉えています。池田氏は今年から実証支援プログラムに参加し、プロジェクトの実現に向けて一層の努力を続ける意気込みを語りました。

A Way to Coffee 児玉氏:コーヒーで社会課題を解決する

児玉氏は、移動キッチンカフェを運営しながら、コーヒーを通じて社会課題に貢献する仕組みを
模索しています。「毎日飲むコーヒーに、価値をプラスして提供することで、消費者と社会を繋げ
る」という独自のビジネスモデルを展開しています。
児玉氏は、アクセラレータープログラムに応募しており、コーヒーを軸にした新しい社会貢献の形
を追求しています。

合同会社秘密会議小山氏:対話を通じた信頼と価値の創出

小山氏は、九州異業種交流会の主催者であり、成功体験の振り返りを通じてスタートアップ支援を行う「成功分析士」としても活動しています。対話を重視したコミュニティ活動を行い、特に「かごしまカフェ会」という対話の場を通じて、カフェラー(カフェ好き)の駆け込み寺的存在となっています。
また、東日本大震災の経験から、「信頼こそが価値を生む」とし、対話による信頼関係の構築がスタートアップの成功に繋がるという考えを持っています。ライトニングトークでは、各起業家がそれぞれの視点から地方の可能性を示し、新しい価値を創出する取り組みが共有されました。鹿児島の地元企業が抱える課題と、そこで生まれる革新的なアイデアが、この地域の未来を支えていくことを実感させる内容でした。今後、これらの起業家たちがどのような展開を見せるのか、ますます注目が集まります。

ネットワーキングセッションの振り返り

LTイベント終了後、参加者は自由に交流できるネットワーキングの時間が設けられ、スタートアッ
プ企業や支援者との関係を深める貴重な機会が提供されました。ここでは、具体的なビジネスア
イデアの相談やパートナーシップの形成が進められ、今後の協力体制を築くきっかけが多く生ま
れました。

参加者の声

さまざまなジャンルの参加者から、ビジネスに対する熱量を感じる声が多く寄せられました。
● 「ネットワーキングセクションが長いのが珍しいと思います。人と人がつながることで、そこからまた出会いが生まれているように感じます。私も別のコミュニティイベントで知り合った方から、今回のCHESTを知りました。こういった連鎖反応が起こることが大事だと思います。」
● 「メディアやホームページではつながれない、こういった場に直接参加することでつながれることがあると思います。」

星原氏へのインタビュー

Q: 本日のLTで印象に残っているとコメントをもらった星原さん、今回参加してみた感想をお願いします。
A: 今回参加したことで、本当に鹿児島の経営者や事業者、これからスタートアップで頑張ろうとしている方々が熱い思いを持ってらっしゃるんだなという印象を受けました。僕自身も持っているサービスや技術で、一緒に鹿児島を盛り上げていきたいと思いました。
Q: やりたいこととコミュニティの関係性は?
A: 凄く大切だと思います。やりたいことがあるが、まだ始められていないという状況で、いかに仲間を作って動くか悩むと思います。実際に動くタイミングで、その関係性ができていれば、動き出す前からの熱量を持ったまま関係性ができ、一緒にチームになる、盛り上げていこうというコミュニティができると思います。なので、こういった場で「こういうことをやります」と皆に伝えていくことが大切です。これがきっかけになって、協力者や仲間が見つかると思うので、迷っている方はぜひ参加してほしいと思います。

ネットワーキングセッションでは、参加者同士の交流を通じて新たなビジネスアイデアやパートナーシップが生まれるなど、非常に活気のある時間となりました。星原氏のコメントにもあるように、これから起業を検討されている方や、既にスタートアップで動いている方も、協力者や仲間を見つける機会として是非参加し、鹿児島のスタートアップシーンを盛り上げていきましょう。

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