【イベントレポート】令和6年度 第4回コミュニティイベント「スタートアップのブランディング・プロダクト開発」
- 公開日
- 2024/12/20
2024年12月19日(木)、鹿児島市のライカワークラウンジにて、かごしまスタートアップ支援プログラム『CHEST』の第4回コミュニティイベントが開催されました。本イベントは、鹿児島県商工労働水産部産業立地課新産業創出室スタートアップ支援係が主催し、有限責任監査法人トーマツが運営を担当しています。
今回のテーマは「ブランディング・プロダクト開発」。新たなプロダクトやブランドを立ち上げ、事業を成長させるために必要な考え方や戦略、さらには成功事例について、登壇者の経験を交えた具体的なアドバイスが共有されました。参加者は起業家やスタートアップ関係者を中心に、活発な意見交換や質疑応答が行われました。

主催者からのメッセージと概要
本イベントは、有限責任監査法人トーマツが運営を担当しています。同社の地域未来創造室は全国30都市でスタートアップ支援に取り組み、鹿児島では3年前から活動を展開しています。「CHEST」プログラムは以下の2つの軸で構成されています。
● かごしまスタートアップ実証支援プログラム
仮説の検証や進捗管理を支援するプログラムで、実証機会の提供や課題解決のサポートを行います。
● かごしまアクセラレータープログラム
資金調達やメンタリング、IPOやM&Aのサポートを行うプログラムで、具体的なプロダクトを持つ企業を対象にしています。
さらに、これらを補完する形で、参加者や外部起業家との交流を目的とした月1回のコミュニティイベントも開催されています。
今回のゲスト
石坂 昌也 氏 (合同会社Design and Management CEO)
石坂氏は、世界最大規模のブランドデザイン会社でクリエイティブディレクターを歴任し、中国初のカンヌ金獅子賞を受賞された実績を持ちます。その後も50を超える国際的なデザイン賞を受賞するなど、輝かしいキャリアをお持ちです。2015年に日本へ帰国後は、国内における世界水準のブランド構築を推進し、数千万ユーザーを抱えるサービスやブランドの立ち上げに成功されています。また、日本全国でブランドに特化したメンタリングや講義を行い、次世代のブランド戦略を担う人材育成にも取り組まれています。

副田 治 氏 (株式会社九州博報堂 九州しあわせ共創ラボ所長)
副田氏は、1997年に株式会社西広に入社後、2020年の事業統合を経て株式会社九州博報堂にて活躍されています。2022年にはRKB毎日放送と共同でスタートアップ支援プロジェクト「REACH REACH FUKUOKA」を立ち上げ、九州地域に根ざした共創デザインを推進中です。現在は、地域をしあわせにすることを目的としたモノづくりやサービス開発、企画立案を幅広く手掛けておられます。また、日本マーケティング学会や日本広告学会の理事も務められ、業界内での知見を深める活動にも積極的に参加されています。

パネルディスカッションの内容
ブランディングの出口戦略について
まず、「ブランディングの出口戦略」に関する議論が行われました。
質問: キューハブのブランディングについて、どれぐらいの出口を見据えて行っているのか?
副田氏: 施設「キューハブ」のブランディングについて、パーパス(目的)が変わらない限りブランドは継続すると説明されました。キューハブは「地域とより良い社会を作る」というパーパスを掲げて設立されたため、この目的が変わらない限り施設のブランディングは続けていくとのことです。さらに、事業そのものとは別に、パーパスに基づいたブランディングを行うことが重要である」と強調されました。
石坂氏:スタートアップにおけるブランディングについて、具体的な事例としてタクシーアプリ「Go」を挙げられました。同アプリは、3年から5年のスパンで段階的にブランド名を変更する戦略を採用して成功したと紹介されました。また、「最初からブランド名を3段階で変える設計を行うことも有効である」とし、短期的な知名度の向上と中長期的なブランド価値の構築を両立させる重要性を説かれました。

名前を変える戦略について
次に、「名前を変える戦略」に関する具体的なアプローチが話題となりました。
石坂氏: スタートアップは限られたリソースの中で成長を目指すため、一気に最終目標を目指すのではなく、小さな目標を段階的に達成しながらブランドを進化させるべきであると述べられました。また、段階的な成長を遂げる中でブランド名を変えることは、認知度の向上と新たなフェーズへの移行をスムーズに行う手段になるとのことです。
副田氏: 「いきなりカテゴリー全体でナンバーワンを目指すのではなく、まずはサブカテゴリーでの成功を積み重ねていくことが重要である」と述べられました。この戦略により、着実にブランド価値を高めていくことが可能になります。
プロへの依頼のタイミング
質問: どのタイミングでプロに依頼すべきか?
石坂氏:「スタートアップはまず自ら限界を試すべきであり、その限界を知ったうえでプロに依頼することが適切である」とアドバイスされました。この過程を経ることで、プロに依頼すべきポイントが明確になり、効率的に外部リソースを活用できるようになると述べられました。また、競争が激しい業界では、市場を早期に占有するために一気にコストをかけるケースもあると補足されました。
副田氏:「エフェクチュエーション」という概念を紹介し、社長自身がすべてを担いながらも、環境の変化に柔軟に対応する姿勢が求められると説明されました。そのうえで、「哲学を貫きながらも、変化を恐れないことが重要である」と強調されました。

メディアの活用方法
質問: メディアの使い方は大企業と中小企業・スタートアップで異なるか?
石坂氏:大企業は社会の公器として自己発信を控える傾向がありますが、スタートアップは積極的に自己発信を行うべきだと述べられました。
副田氏:「情報を一方的に流すだけでは伝わりにくい時代になっている」とし、ソーシャルメディアを活用し社会を味方につける戦略が重要だと述べられました。
交流会での声


イベント後の交流会では、登壇者や参加者同士での意見交換が活発に行われ、新たな気づきや視点が得られる場となりました。
善きよーき 堀添さん: 「ブランディングにおいて手弁当が必要という点に共感しました。私もスタートアップとして手探りで進めているので、大変参考になりました」と語られました。また、他の参加者との交流を通じて、起業家としての視野を広げるきっかけになったとのことです。
株式会社fab 星原さん: 「毎回異なる学びがあり、継続して参加することで周りのメンバーと一緒に成長できていると感じます」とのことでした。
まとめ
今回のイベントは、ブランディングやプロダクト開発における具体的な戦略や事例を通じて、参加者に多くの学びを提供する場となりました。特に、段階的な成長戦略や手弁当で始める重要性についての解説が印象的で、多くの参加者から高い評価を得ました。
また、参加者同士のネットワーキングを通じて、新たなつながりや協力の可能性が広がりました。こうしたイベントは、スタートアップが孤独になりがちな環境の中で仲間を見つけ、成長を支える重要な役割を果たしています。
次回のイベントも、さらなる学びとつながりを提供する場として、多くのご参加をお待ちしております!